備忘録
収集用コインに関する専門用語、データなど、コレクションを楽しむための豆知識を収録します。50音順用語集としてご活用下さい。随時、更新して参ります。
38.1mm(小型)
新1円銀貨 明治20年 後期 小型タイプ。
1 Yen (1887) M20 JNDA01-10B 38.1 mmと記載されます。明治20年の小型タイプは、ギザ数193でその直径は38.1mm前後とされます。分類名はこの直径に由来します。
主な識別ポイントは、直径(38.1mm)の他に、年号“二十”の十字2画目のフデを落とした部分が横に広い、竜図のほおヒゲが大きく「大ほおヒゲ」となり、耳穴の半分近くにまで至ること。更に、竜頭の下にある珠玉が「中渦少巻」となります。
この銘柄、MS64が僅か1枚しか存在しない(2021年6月30日時点 PCGS Population Report)状態稀少銘柄です。
38.6mm(大型)
新1円銀貨 明治20年 前期 大型タイプ。
1 Yen (1887) M20 JNDA01-10 38.6 mmと記載されます。明治20年の大型タイプは、ギザ数198でその直径は38.6mm前後とされます。分類名はこの直径に由来します。
主な識別ポイントは、直径(38.6mm)の他に、年号"二十"の十字2画目のフデを落とした部分が横に狭い、竜図のほおヒゲが小さく「小ほおヒゲ」となり、耳穴の左端程度までであること。更に、竜頭の下にある珠玉が「中渦多巻」となります。
3 Flames(3本火炎・三刺竜)
新1円銀貨明治25年「後期」。明治25年の通常タイプ。
主な識別ポイントは2つで、竜図面の刺の数、宝珠の形状です。三刺竜と呼ばれ、年号“二十”上部の火炎上にある刺しの数が3つです。また、竜頭左下に位置する宝珠は、小渦巻で左端先端部が下向きとなります。
4 Flames(4本火炎・四刺竜)
新1円銀貨明治25年「前期」。明治25年の稀少タイプ。
主な識別ポイントは2つで、竜図面の刺の数、宝珠の形状です。四刺竜と呼ばれ、年号"二十"上部の火炎上にある刺しの数が4つです。また、竜頭左下に位置する宝珠は、大渦巻で左端先端部が上向きとなります。
53Rays-65Beads(後期)
旭日大字5銭銀貨 明治4年 後期。
5Sen M4(1871) JNDA01-34 53Rays-65Beadsと記載されます。旭日大字5銭銀貨の後期タイプは、旭光53本、玉列65個となることが本名称の由来です。
主な識別ポイントは、上記英名のポイント、旭光と玉列に注目し、いずれも比較的粗め(間隔が広め)であるかでも確認できますが、一般的には、菊紋面左側10時の方向、桐のつぼみと花が離れているか近接しているかで容易に識別可能です。近接している方が「後期」となります。
後期は、比較的入手しやすく、この銘柄、原色の中に軽い時代色を帯びた美しい状態の品を入手可能ですが、年々見かける数が少なくなっているようにも思われます。なお、同じ明治4年銘の旭日竜5銭銀貨は「Dragon」と呼称されます。
66Rays-79Beads(前期)
旭日大字5銭銀貨 明治4年 前期。
5Sen M4(1871) JNDA01-34 66Rays-79Beadsと記載されます。旭日大字5銭銀貨の前期タイプは、旭光66本、玉列79個となることが本名称の由来です。
主な識別ポイントは、上記英名のポイント、旭光と玉列に注目し、いずれも比較的密(間隔が狭い)であるかでも確認できますが、一般的には、菊紋面左側10時の方向、桐のつぼみと花が離れているか近接しているかで容易に識別可能です。離れている方が「前期」となります。
前期は、とても少なく、この銘柄、特に状態にこだわると極めて入手しづらい銘柄です。また、専門家でも誤って分類しやすい傾向がありますので、扱いには特に注意が必要です。なお、同じ明治4年銘の旭日竜5銭銀貨は「Dragon」と呼称されます。
Altered Surfaces(修正)
修正。日本で修正と言えば、荘印が打たれた円銀への修正、すなわち、穴埋めを主体とした加工を思い浮かべますが、Altered Surfacesは、より広い意味で使われます。主に見た目を改善するために、コインの表面に手を加えた状態と定義されます。
具体的には、ワックスなどでのキズを目立たなくする手法、パテや金属による穴埋め、ラッカーなどでのコーティングなどが挙げられます。ラッカーに関しては、完全な除去が出来、且つ、表面の状態に不適切洗浄などの問題がなかった場合、数字ランクが付されます。不可逆的な加工がなされている場合、数字ランクが付く可能性はなくなります。
Authenticity Unverifiable(真贋不明)
真贋不明。Counterfeit(偽物)とは区別されます。精密な鑑定を行ったものの、最終的に真贋を含むコイン情報の確定ができなかったコインに表記されます。スラブケースには入りません。
具体例として、正確な鑑定に必要な表面の状態が確認できないほどに、磨きあげられたもの、腐食したものなどが挙げられます。専門家間で意見が分かれるコインもこれに該当することがあります。
Broadstrike(幅広打ち)
エラーコインの一種。幅広打ち。
コインを打刻する際、円形をカラーと呼ばれる保持リングで固定し圧印しますが、このカラーが外れて圧印されると、間延びした打刻となってしまいます。打刻が中央になされている場合「Broadstrike(幅広打刻)」、中央を外れている場合「Uncentered Broadstrike(偏心幅広打ち)」とされます。更に、意匠の一部を欠損するほどずれたものには「Off Center Strke(ズレ打ち)」と呼ばれます。
CCW Spiral-Straight 七(前期)
新1円銀貨明治7年「前期」。
主な識別ポイントは2つで、竜図面の年号、七字と宝珠です。細七と呼ばれる比較的細い七字は、2画目のトメが上がりません。竜頭左下に位置する宝珠は、左巻となります。
CW Spiral-Straight 七(中期)
新1円銀貨明治7年「中期」。
主な識別ポイントは2つで、竜図面の年号、七字と宝珠です。細七と呼ばれる比較的細い七字は、2画目のトメが上がりません。竜頭左下に位置する宝珠は、右巻となります。
CW Spiral-Tilted 七(後期)
新1円銀貨明治7年「後期」。
主な識別ポイントは2つで、竜図面の年号、七字と宝珠です。太七と呼ばれる比較的太い七字は、2画目のトメが上がります。竜頭左下に位置する宝珠は、右巻となります。
更に、後期には「浅彫」と「深彫」が存在します。菊紋面の葉脈で容易に識別可能です。
Coin alignment(コイン型配置)
コインを180度縦転した際に、裏面のデザインが正位置になる配置。
多くのコインはこの表裏の配置で製作されており、主に明治時代の日本貨幣もこの配置となっております。但し、現行貨を含むほとんどの日本貨幣はメダル型配置となっており、いわゆるメダル型配置で製作されているコインも少なくありません。
Color RD(赤)
PCGS、NGCが、銅貨、青銅貨に適用する色調評価。RDはRedの略で、原色割合95%以上のほぼ原色を意味する評価記号です。MS65RDなどとして、数字評価の次に付されます。
銅貨の原色を維持することは特に難しく、例えスラブケースに入っていても極めて高度な管理が要求される、とても繊細な状態です。
Color RB(赤茶)
PCGS、NGCが、銅貨、青銅貨に適用する色調評価。RBはRed Brownの略で、原色割合5〜95%と非常に幅広い範囲をカバーする評価記号です。MS65RBなどとして、数字評価の次に付されます。
実に90%もの広範囲に摘要されるので、同じRBでも原色割合90%と10%では、見た目が大いに異なりますので、現物の確認が特に重要になってくるランクとも言えます。
Color BN(茶)
PCGS、NGCが、銅貨、青銅貨に適用する色調評価。BNはBrownの略で、原色割合5%未満とトーンに覆われた銅貨を意味する評価記号です。MS65BNなどとして、数字評価の次に付されます。
RD評価の原色品はともかくとして、状態評価の数字ランクと異なり、RBとBNは明確な上下関係はありません。BNはほぼ全域にトーンを帯びている評価ゆえに、むしろ整った印象を与える物も多く、また、BN未使用銅貨が持つ独特の深い艶は、根強いファンもいるほど魅力的なものです。
Counterfeit(偽物)
偽造品。最も大きなショックを受ける内容です。
コイン自体は真正品であっても、年号やミントマークの改ざんがなされたものもこの項目に含まれます。
Crossover(クロスオーバー)
PCGS、NGCが提供するサービス。相互のスラブコインを現状ランク、もしくは、指定ランク(現状未満を指定可能)以上の場合に限り、ケース移行を行います。事前鑑定にて、現状未満、もしくは、指定未満とのランク判断になった際には、現スラブケースは温存されます。
少々料金は割高になりますが、スラブの保証は、ケースから出してしまうと失効しますので、安全に保証継承ができる点は大きな安心感になります。
Curved Tail 本(前期 ハネ本)
旭日竜大型50銭銀貨明治4年「前期(ハネ本)」。
旭日竜大型50銭銀貨のKM番号である"Y-4"とのみ記載されることもあります。大日本の"本"字2画目がハネる、稀少タイプです。桐葉第2葉が粗葉脈になりますが、密葉脈も存在する可能性はあります。菊紋面の陽光(1時の方向)が短い、稀少な短陽光も存在します。
MS64以上の人気が高く、小型タイプに比べハイランク品は少ない傾向があります。
Damage(ダメージ)
損傷全般。意図的、偶発的問わず、深刻なアタリ傷、凹み、黒点などの除去跡は、程度によるものの、数字ランクを見合わされる要因になります。落書きや黒点除去など人為的なものは、より厳しくこの規定を適用されるようです。
Deep Scales(明瞭ウロコ)
旧5円金貨、旭日竜20銭、10銭、5銭銀貨明治3年「明瞭ウロコ」。
直訳すると深いウロコで、明治3年の旧5円金貨、旭日竜20銭、10銭、5銭の各銀貨に存在します。言葉通り、竜図のウロコが一枚一枚深く立体的に描かれております。
Deep Veins(深彫)
新1円銀貨明治11年「深彫」。
直訳すると深い葉脈で、現時点では、円銀明治11年の前期型とされる「深彫」にのみ用いられております。言葉通り、葉脈の製作で容易に識別できますが、圓字左にある桐花つぼみ部分の枝がなだらかになる点でも識別可能です。
Details grading(○○相当評価、等級なし)
何らかの理由により等級(数字)評価が見合わされたコインに用いられる評価。UNC Details(未使用相当)、AU Details(準未相当)などと表示されます。スラブケースには入りますが、数字評価がなされません。
等級評価が見合わされる理由は、主に、Filed Rims(縁修正)、Questionable Color(人為的な彩色)、Cleaning(不適切洗浄)、Planchet Flaw(平金破損)、Altered Surfaces(修正)、Scratch(スクラッチ)、Environmental Damage(不適切保管)、Damage(ダメージ)があり、日本で最も多く見受けられるのは、Cleaningだと思われます。
状態の良い美しいコインほど、上記の指摘を受けやすい傾向があり、注意が必要です。
Double Struck(二重打)
打刻ミスや平金の再利用による再刻印貨。元の打刻がうっすらと確認できます。日本貨幣では、分金銀類で散見されます。
Doubled Die Obverse(表面二重打)
DDO。意匠の一部が段付きになるような二重打。旭日竜20銭銀貨、旭日竜5銭銀貨など特定の銘柄に見られる傾向があり、手変わりの一種として認識されてもおります。類品にDDR“Doubled Die Reverse(裏面二重打)"があります。
DPL(ディーププルーフライク)
Deep Prooflike、直訳すれば、深遠なプルーフ様。まるでプルーフのような、鏡面状の平地部分とフロスト状の凸部分を持つ美しい状態を意味します。DPLは、凹凸部に特に高いコントラストを持つコインにのみ用いられる特別な付加記号です。真新しい極印により打刻された、いわゆる初期打ちのコインがこうなると言われます。
PCGSには、同義の表記に「DMPL(Deep Mirror Prooflike)」がありますが、これは2021年4月現在、モルガンダラーにのみ用いられる付加記号となっております。
Early Period(前期)
20銭銀貨 明治8年「前期」。
明治8年自体が発行枚数わずか61万枚あまりの特年ですが、前期は特に少なく、状態にこだわるとかなりの難獲銘柄です。PCGS Population Reportによると、MS65以上のハイランク品は、わずかに7枚しか存在しません(2021年11月現在)。見分け方は簡単で、菊紋面下部のリボン長短で分類できます。前期は長リボンで、馬の歯まで届きそうなほどの長さを誇ります。
なお、明治8年銘に多く見られる、大八ですが、20銭銀貨にも存在し、その他額面に比べ、大八率が高いように感じます。
Environmental Damage(不適切保管)
不適切な保管によるダメージ。数字ランクが見合わされる要因として、洗浄に次ぐ多さを記録するのが、このEnvironmental Damageです。高湿度下での長期保管、海洋引き上げ、土中埋蔵などによって生じた、腐食、極端な濃色トーンがこれにあたります。
Filed Rims(縁修正)
縁のやすりがけ。縁へのアタリキズや縁に残った宝飾品への加工跡を隠す行為から、金や銀などの貴金属コインの縁を削りかすめ取る行為など、縁への修正行為全般を表します。
縁はスラブケースに入った際に、見えにくくなる箇所でもあります。厳しくチェックされます。
Finned Rim(縁バリ残り)
エラーコインの一種。ヒレのように縁に余分な部分が残ってしまうこと。バリ残り。
旭日竜銀貨など初期の近代銀貨に稀に見られますが、現代のプルーフ貨にも存在します。
Full Brockage(陰打エラー)
エラーコインの一種。陰打エラー。
圧印の際、何らかの理由により一度圧印したコインが排出されず、そのコインが極印代わりとなり打刻されることにより発生するエラー。竜図の銅貨では、比較的よく見ますが、基本的に市場に出てくることは非常に少ないエラーです。
表のデザインで揃っている場合「Full Brockage obv」、裏のデザインで揃っている場合「Full Brockage rev」と表示されます。
Hairline(ヘアライン)
洗浄や磨きによる擦り跡。髪の毛のような薄く細い線で、光線の角度により見え隠れすることがあります。写真では確認できないこともあり、また、直接精査しても見落としてしまうこともあり、注意が必要です。PCGSやNGCのグレーディングでは、このヘアラインが確認されると不適切洗浄(Improperly Clean、単にClean)として、数字ランクが見合わされるようになります。
High Dot(後期)
旧1円金貨 明治4年「後期」。
旧1円金貨明治4年の90%以上を占めると言われる後期、一般的なタイプです。
一圓字の下にある点の位置が比較的高い位置にあり、英語分類名の由来となります。明字がハネ明となる点もわかりやすい分類ポイントです。
一般的なタイプではありますが「幅広四」「短足貝 離足」など稀少手変わりも含まれ、圓字や本字、明字に様々な変化(手変わり)が存在し、近年研究が進んでおります。
『収集』2008年5月号に「旧1円金貨 明治4年の手変わりと分類法について(案)」との、大変参考になる記事があります。
Later Period(後期)
20銭銀貨 明治8年「後期」。
明治8年自体が発行枚数わずか61万枚あまりの特年、後期は入手しやすい分類となります。見分け方は簡単で、菊紋面下部のリボン長短で分類できます。後期は短リボンで、短く控えめなリボンとなります。比較的、打刻が良いものが多く、セミプルーフライクを呈するものをよく見かけ、ほどよい大きさといい、竜図の魅力を存分に愉しめます。
なお、明治8年銘に多く見られる、大八ですが、20銭銀貨にも存在し、その他額面に比べ、大八率が高いように感じます。
Long 年(長年)
竜50銭銀貨 明治6年「長年」。
竜50銭銀貨 明治6年の稀少人気手変わりです。
年字5画目の左端が長く(馬の歯4つほど)、力強く大胆な年字となり、肉眼でも区別しやすいタイプです。
正年との中間調である中年も存在しますが、こちらは「Short 年(普通年)」として分類されます。
『日本の近代銀貨-50銭銀貨の部-』亀谷雅嗣著 書信館出版に極印情報が体系的に網羅されております。
Low Dot(前期)
旧1円金貨 明治4年「前期」。
旧1円金貨明治4年では、中期に次いで少ないタイプです。
一圓字の下にある点の位置が比較的低い位置にあり、英語分類名の由来となります。明字がトメ明となる点もわかりやすい分類ポイントです。
大分類上の前期自体、少ないタイプですが、大字、本字、治字にいくつかの変化が報告されております。味わいのある雰囲気が人気の分類です。
Low 4(降四)
円銀 明治14年「降四」。
円銀の明治14年銘に存在する稀少人気手変わりです。年号の「四」字が、中央より下がり(降り)、明確に馬の歯寄りに位置しますので、ルーペを使わずに分類可能です。
Medal alignment(メダル型配置)
コインを180度横転した際に、裏面のデザインが正位置になる配置。
多くのメダルはこの表裏の配置で製作されており、そう呼ばれますが、現在の日本貨幣もこの配置となっており、日本人には一般的なコインの表裏配置です。
Mule(ミュール、ラバ)
片意地者の意味もあるミュールですが、コインにおいては、表裏の意匠が通常と異なる組み合わせになるコインのことを意味します。馬とロバ、異なる種の子孫であるラバが名前の由来と言われます。
表表、裏裏の組み合わせ、そして、本来異なるコインの意匠を併せ持った品が存在し、造幣局が意図的に製造したもの、造幣局のエラーで出来たものに加え、民間の第三者が製造したものも含まれますので、注意が必要です。
NCS Conservation(NCS保護)
NGCグループのNCSが提供する修復サービス。NGCの場合、グレーディングサービス完了直前に、必要に応じNCSサービス推奨の連絡が来ることがあります。基本的に汚れや付着物を除去するサービスで、キズや歪みなど物理的ダメージには対応できません。最も効果的なのは、PVC(ポリ塩化ビニル)の除去で、ビニル製ケースなどの劣化で曇ったような汚れがついたコイン、特にNGCで"PVC"との評価を得てしまったものに最適です。緑青などの錆の除去にも効果的ですが、錆はコイン自体に深く侵食しダメージを与えていることも多く注意が必要です。主に金貨、銀貨向けのサービスですが、このサービス後コイン全体の雰囲気が大きく変わることも有り、美しいトーンを纏った歴史的なコインには慎重さが求められます。一方、現代コインには、製造時の輝きを取り戻す劇的な効果を発揮することがあります。NGCケース入りコインの場合、このサービスの結果、ランクが上がることもあります(下がることはありません)。このサービスは、サービス内容が変更されることが多く、サービスの性格柄、不可逆的な面も有り、ご利用前にご不安がある方は、ぜひ弊社までご相談下さい。
NFC認証(PCGS)
PCGS社が2020年10月に発表し、順次導入された新しいスラブケース認証方式です。ラベル裏面のNFCタグマークが目印です。NFCとは「Near Field Communication」の略で「近距離無線通信」を意味し、電子マネーの決済にも使われる高いセキュリティを持った技術です。
使い方は簡単で、NFCタグが埋め込まれたPCGSケースに、スマートフォンなど対応端末を近づけるだけで、アプリが起動し、コインの詳細情報を確認することができます。これまでのQRコードに代わって採用されました。なお、NFC非対応の端末の場合、表面のバーコードを読むことで情報の確認をすることができます。
PCGS社によると、利用にあたっては、アプリ「PCGS Cert Verification」(無料でダウンロード可)が必要で、2012年以降のAndroid及びiPhone8以降のNFC対応端末で利用できるとのことです。
NGC
NGC(Numismatic Guaranty Corporation)は、1987年に設立された収集用コイン第三者鑑定専門機関。本拠はアメリカ、フロリダ州。
NGCの魅力は、まず、守備範囲の広さ。古くは中世のものから現代のものまでを幅広く取り扱い、評価方式こそ異なるものの古代コインさえも評価対象となります。
なお、日本貨幣は、1870年(明治3年)以降の打製コインのみが評価対象になります。さらに特別サービスとして、財務省放出近代金貨には、シール貼り付け式評価を展開。財務省ラベルの同位置裏面に評価シールを添付し、ケースの上下にホログラムシールによる封印を行い、セキュリティの高い評価が施されます。
そしてもう一つの魅力が、スミソニアン博物館との共同プロジェクトにより開発された不活性プラスチックと中性紙により構成された特製ケースです。このケースは状態保全に効果的なだけではなく、エッジビューケースと呼ばれ、コインを複数の柔らかな爪でケースに固定することにより、エッジ部分が見られる特性があります。また、既存のケースに収まらない超大型コインに関しても、NGC OVERSIZE HOLDERという圧巻の特製特大ケースを用意する柔軟さを持ち合わせます。
関連会社に、経年による付着物や汚れ、劣化などを除去し、コインの見た目を美しくするサービスを行うNCS、紙幣の鑑定評価を行うPMG、収集用書籍を専門とするCGCがあります。
Off Center Punched Center Hole(穴ズレエラー)
エラーコインの一種。穴ズレエラー。略して「O/C Punched Center Hole」とも記載されます。
5円黄銅貨や50円白銅貨などの有孔貨幣で、本来中央にあるべき穴が不具合によりズレて穿孔されたエラー。
類品として、穴が無い無孔エラー「Unpunched Center Hole」、二重に穿孔された二重穴エラー「Double Punched Hole」があります。
Open Top 日(欠日)
20銭銀貨 明治6年「欠日」
日字2画目の上部が欠けている有名且つ稀少な欠けもの手変わりです。
同じ欠けものでも、欠銭は痕跡があるものは欠銭として認定されない一方、欠日はごく薄い痕跡があっても欠日として認定されます。完全に痕跡がないものは存在しないのかもしれません。関連銘柄に、欠日となった極印を修理修正したと思われる「欠日補刻」、欠日に移行する過程と思われる「欠日移行」などがあり、明治6年の20銭は、4葉内主脈、4葉接主脈などとあわせ、手変わりが豊富に報告されています。
なお、通常品は「Type2 明 CN」とのみ、記載されます。
Oversize Holder(大型サイズスラブ)
通常のスラブケースは、概ね直径40mm強までのコイン、一般的には1オンスサイズまでのコインが収納できます。
5オンス銀貨などの大型コイン、1キロ金貨などの超大型コインは、オプションサービスとなりますが、Oversized Holderと呼ばれる特製ケースに収納可能です。
概ね、5オンスサイズは、Oversized Holder(PCGS)、The medium NGC Oversize Holder(NGC)、1キロサイズは、Jumbo-sized Holder(PCGS)、The large NGC Oversize Holder(NGC)と、サイズに応じ適宜使い分けられます。
PCGS
PCGS(Professional Coin Grading Service)は、1985年に設立された収集用コイン第三者鑑定専門機関。本拠はアメリカ、カリフォルニア州。
PCGSの魅力は、その知名度と豊富な鑑定実績です。日々増える総鑑定枚数は、いよいよ2100万枚を越え、本国アメリカでも特に自国コインの鑑定実績に定評があると聞きます。もちろん、日本のコインにも実績を積み重ね、収集家の信頼を着実に獲得しており、日本でスラブと言えばPCGSのこととの声も聞くぐらいです。一方、いくつかの手変わりについては、日本での最新の見解と異なる解釈を持つこともあります。
また、手に収まりのいい、透明ケースも高級感があり人気を博しております。スラブのデメリットである窮屈なイメージを与えにくいと好評です。もちろん、状態保持に関しても定評があります。
取り扱い対象コインは、古くは中世のものから現代のものまで原則『世界のコイン標準カタログ(Standard Catalog of World Coins)』掲載のコインを幅広く取り扱います。なお、日本貨幣は、上記カタログ掲載のスラブケースに収まるサイズの打製コインが評価対象とされます。
2010年より、PCGS Secure Plus™という、より厳格な評価を行う新サービスも開始しました。これは、通常の鑑定評価と別に、レーザー技術によるコインの識別技術を柱とした高精度な評価サービスです。
PCGS Restore(PCGSレストア)
PCGSが提供する修復サービス。基本的に汚れや付着物を除去するサービスで、キズや歪みなど物理的ダメージには対応できません。最も効果的なのは、PVC(ポリ塩化ビニル)の除去で、ビニル製ケースなどの劣化で曇ったような汚れがついたコイン、特にPCGSで“PVC”との評価を得てしまったものに最適です。緑青などの錆の除去にも効果的ですが、錆はコイン自体に深く侵食しダメージを与えていることも多く注意が必要です。主に金貨、銀貨向けのサービスですが、レストア後コイン全体の雰囲気が大きく変わることも有り、美しいトーンを纏った歴史的なコインには慎重さが求められます。一方、現代コインには、製造時の輝きを取り戻す劇的な効果を発揮することがあります。PCGSケース入りコインの場合、このサービスの結果、ランクが上がることもあります(下がることはありません)。このサービスは、サービス内容が変更されることが多く、サービスの性格柄、不可逆的な面も有り、ご利用前にご不安がある方は、ぜひ弊社までご相談下さい。
Peeling Lamination(剥離片の破損)
平金破損により生じた剥離片がはがれ落ちそうな状態となっており、スラブケースへの密閉作業が危険な場合、スラブケースへの封入が見送られ、評価も見合わされることがあります。往々にして深刻な平金破損に見られます。
PL(プルーフライク)
Prooflike、直訳すれば、プルーフ様。まるでプルーフのような、鏡面状の平地部分とフロスト状の凸部分を持つ美しい状態を意味します。真新しい極印により打刻された、いわゆる初期打ちのコインがこうなると言われます。
関連用語に「DPL」が存在します。PLの中でも、特に高いコントラストを持つコインに用いられます。
Planchet Error(平金関連エラー)
平金の成形や打刻時に発生するエラーは多岐にわたります。
平金が本来の正円ではなく一部欠損した形で成形され、そのまま打刻された“End of strip Clip Planchet(平金破断エラー)"、類品として“Struck on Elliptical Planchet(楕円形平金エラー)”、更には再度くり抜かれてしまった“Double Clipped Planchet(二重切り取りエラー)”などがあります。
また、平金成形時、内部に気泡の混入などが発生し打刻をきっかけに表裏2枚に割れた“1/2 of 100% Split Planchet(平金分離エラー片面打ち)"も存在し、見栄えのする派手なエラーとして人気があります。
Planchet Flaw(平金破損)
平金破損。平金に含まれる気泡などの不純物が、製造時の打刻により破裂、破損を起こし、平金に割れや裂けが生じることを意味します。製作精度の高い日本貨幣では、珍しい現象であり一般にエラーとして認識されますが、銘柄によっては多く存在することもあり、状態の延長線上に捉えられることもあります。グレーディングサービスにおいては、程度と存在位置により数字ランクが見合わされることもあります。但し、ミントエラーサービスにおいては、この限りではありません。
PVC Residue(ポリ塩化ビニル汚れ)
ポリ塩化ビニルの付着汚れ。多くは薄緑色を呈し、膜がかかったような汚れとなります。ポリ塩化ビニルを含んだコインホルダー、ケースなどの経年劣化により、付着することがありますので、これらを用いる際は、フィルムパックなどをかませて対策する必要があります。耐衝撃性に効果的なPVCを含んだケースは、多く活用されていますので、注意が必要です。
なお、PVCの付着が認められると、PCGSもNGCもスラブケースに入れてくれませんが、レストアサービスなどにより除去できる可能性が高いです。除去に成功し、コインにその他の異常が見られなければ、スラブケースに入り、数字ランクがつきます。
グレーディングの際、ケースに入らずに戻ると大きなショックを受けますが、PVC Residueの記載であれば、回復できる可能性がありますので、ご相談下さい。
Questionable Color(人為的な彩色)
自然なトーンではないと疑われた場合に表記されます。この評価を受けると、スラブケースには入りますが、数字ランクが見合わせられる要因になります。
一般にトーンはネガティブに捉えられることが多い事象ですが、原色を残しつつ虹色に輝くトーンなど感動を覚える色調のものも多々あり、高い評価に繋がる傾向があります。そこで、薬品などを用いて人為的な彩色を施すとの考えが発生しますが、不自然な色調が見逃される可能性は決して高くありません。
Regrade(リグレード)
PCGS、NGCが提供するサービス。そのブランドのスラブコインを再評価します。新しい固有番号が付されランクが上昇することもありますが、下がることはありません。現状と同ランクとなった場合も新品スラブケースにリフレッシュできるメリットがあります。以前に存在しなかった分類評価を追記して欲しい際にも有効です。
Regular 2(普通二)
新1円銀貨 明治23年、明治24年「普通二」。
“Reg 二"とも記載されます。普通二とはあまり呼びませんが、Small 2(小頭二)に対しての普通二、通常タイプのことを表します。本稿執筆時点で、明治23年のみに使用されております。
Reholder(リホルダー)
PCGS、NGCが提供するサービス。新品ケースに入れ替えます。
ケースの鑑定は行われますが、リグレードと異なり新たなグレーディング作業は行われず、固有番号、分類表記などは、現状表記がそのまま移行されます。PCGSでは、SecurePlusにアップグレードされます。
Rotated Dies(傾打エラー)
エラーコインの一種。表裏のデザインが本来の設定と異なる角度で打刻されたコイン。傾打、角度ズレとも呼ばれます。
傾いた方向が、時計回りをCW(clockwise)、反時計回りをCCW(counter clockwise)として、傾いた角度とあわせ、90°CW Rotated Dies(時計回りの90度傾打)と表します。コインの種類にもよりますが、概ね20度未満の傾打はMint Errorとしての取り扱いをされないことがあります。
Scratch(スクラッチ)
ひっかき傷。一般にコイン同士が接触してついたバッグマークとは区別されます。PCGSやNGCのグレーディングでは、このスクラッチが数字ランクが見合わされる要因の一つになりますが、軽度なものなど目立ちにくいものは、問題視されないこともあります(相応の減点はあります)。スクラッチができた位置も重要で、肖像などの重要且つ目立つ部分にできたものは程度が浅くても厳しい判断に至ることもあります。
Sen Complete(正銭、通常品)
旭日竜20銭銀貨明治4年「正銭(通常タイプ)」。
銭字の13画目が欠けてない通常タイプ。欠銭(Incomplete)に対し、Completeと記載されますが、日本語では、特に記載されることのない通常タイプとなります。
細分類をすれば、標準字体のほか「二重銭」「欠銭移行」「欠銭様」と欠銭への移行段階のものもあります。
Sen Incomplete(欠銭)
旭日竜20銭銀貨明治4年「欠銭」。
銭字の13画目が欠ける稀少タイプ。有名な人気手変わりです。通常品との価格差は1.5〜2倍以上に昇ります。
標準字体からの移行期とみられる「欠銭移行(薄い痕跡が残る)」「欠銭様(短い痕跡が残る)」も存在しますが、これらは通常、欠銭に分類されないのでご注意下さい。
Shallow Scales(不明瞭ウロコ)
旧5円金貨、旭日竜20銭、10銭、5銭銀貨明治3年「不明瞭ウロコ(通常タイプ)」。
直訳すると浅いウロコで、明治3年の旧5円金貨、旭日竜20銭、10銭、5銭の各銀貨に存在します。通常タイプとして、特に表記されないことが多いです。言葉通り、竜図のウロコが大らかな形成となります。
Shallow Veins(浅彫)
新1円銀貨明治11年「浅彫」。
直訳すると浅い葉脈で、現時点では、円銀明治11年の後期型とされる「浅彫」にのみ用いられております。言葉通り、葉脈の製作で容易に識別できますが、圓字左にある桐花つぼみ部分の枝が直角枝になる点でも識別可能です。
Short 年(普通年)
竜50銭銀貨 明治6年 普通年(通常タイプ)。
竜50銭銀貨 明治6年の大多数を占めると言われる一般的なタイプです。
年字5画目が比較的短く、バランスの良い年字となり、正年、通常タイプ、もしくは、分類名を特に記載されずに表現されます。
一般的なタイプではありますが、明治6年には手変わりが多く、近年研究が進んでおります。
『日本の近代銀貨-50銭銀貨の部-』亀谷雅嗣著 書信館出版に極印情報が体系的に網羅されております。
Small 2(小頭二)
新1円銀貨 明治23年、明治24年「小頭二」。
"Small 二"とも記載されます。年号の“二”字1画目が比較的短い特徴を持つ手変わり。ルーペを使わずとも分類できる変化であり、特に明治23年の小頭二は稀少性高く、人気があります。本稿執筆時点で、明治23年のみに使用されております。
Square Scales(角ウロコ)
2銭銅貨、竜1銭銅貨、半銭銅貨「角ウロコ」。Sq. Scalesとも表記されます。
上記いずれの額面でも明治6〜10年に存在します。明治10年より後期型の図案となる波ウロコが登場、以降の年号は全て波ウロコとなります。
判別は、竜図のウロコ部分が、角張ったものが角ウロコ、V型となるものが波ウロコとなります。
2銭と半銭のみ、角ウロコ最終年の明治10年に、波ウロコタイプも存在します。1年号に2タイプが共存する明治10年の角ウロコは稀少バラエティとなります。
Stem Cut Facing Down(下切)
竜50銭銀貨「下切」。
下切は、明治9、10、18、30、31、38年に存在し、上切と共に両タイプが存在する明治9、10、30、31、38年に分類記載されます。
判別は、菊紋面の下部7時の方向、リボンの左端をご確認下さい。先端がやや上向きになり、下端が切れているように見えるものが、下切りです。
明治31年のみが稀少バラエティとなり、特に状態の良いコインは入手難です。
Stem Cut Facing Up(上切)
竜50銭銀貨「上切」。
上切は、明治9、10、30〜38年に幅広く存在し、下切と共に両タイプが存在する明治9、10、30、31、38年に分類記載されます。
判別は、菊紋面の下部7時の方向、リボンの左端をご確認下さい。先端が下向きになり、上端が切れているように見えるものが、上切りです。
上切は稀少バラエティであることが多く、特に明治30年の上切は、状態の良いコインは言うに及ばず状態問わず入手は極めて困難です。
Straight Tail 本(後期 止本)
旭日竜大型50銭銀貨明治4年「後期(止本)」。
旭日竜大型50銭銀貨のKM番号である“Y-4”とのみ記載されることもあります。大日本の“本”字2画目がハネない、一般的なタイプです。桐葉第2葉が粗葉脈になる稀少タイプと密葉脈になる通常タイプが存在し、本字上部の火炎に囲まれたウロコが小ウロコ(ウロコ2枚半)、大ウロコ(ウロコ2枚)が存在します。
MS65以上の人気が高く、小型タイプに比べハイランク品は少ない傾向があります。
Toned(トーン)
正確な表記は、Toned coin、直訳すれば、色調を与えられたコインとなります。トーンには、色調や濃淡の他に格調などの意味もありますので、実はかなりポジティブな言葉でもあります。いわば、時の流れに彩られたコインです。トーンに覆われた部分のごく軽度のスレやスクラッチは、評価の際に減点を受けにくいと言ったことすらあるようです。
だからこそ自然なトーンではない、人工的な調色は区別され、明確に問題視されます。
なお、弊社では、特に淡く美しいトーンを時代色と言った表現でご案内することもあります。
Type1 明 NC(トメ明)
止明。明 NCは、明 Not Connectedの略で、"明"字4画目、ひへんの横画が2画目を突き抜けることなく、"月"に接しない(Not Connect)ことから、こう呼ばれます。
旧5円金貨明治8年、新20円金貨明治30年(2021年3月時点でPCGS分類非対応)、竜20銭銀貨明治9年、竜10銭明治8年、竜5銭明治6年、明治9年、明治10年、1厘明治8年に存在します。
Type2 明 CN(ハネ明)
跳明。明 CNは、明 Connectedの略で、"明"字4画目、ひへんの横画が跳ねて2画目を突き抜け“月”に接する(Connect)ことから、こう呼ばれます。
旧5円金貨明治8年、新20円金貨明治30年(2021年3月時点でPCGS分類非対応)、竜20銭銀貨明治9年、竜10銭明治8年、竜5銭明治6年、明治9年、明治10年、1厘明治8年に存在します。竜5銭明治10年のハネ明は、半ハネ明となり、注意が必要です。
V Scales(波ウロコ)
2銭銅貨、竜1銭銅貨、半銭銅貨「波ウロコ」。
2銭銅貨では明治10〜17年、竜1銭銅貨では明治13〜21年、半銭銅貨では明治10〜21年に存在します。
判別は、竜図のウロコ部分が、角張ったものが角ウロコ、V型となるものが波ウロコとなります。
2銭と半銭のみ、角ウロコ最終年の明治10年に、波ウロコタイプも存在します。1年号に2タイプが共存する明治10年の角ウロコは稀少バラエティとなります。
w/Border(有輪)
有輪。w/Borderは、With Borderの略で、旭日中央部の日章と陽光の間に境界線があるものを指します。
旧10円金貨明治4年(w/Flag Borderとの表現もあります)、旧5円金貨明治3年、明治4年、旧1円銀貨明治3年に存在します。
w/o Border(無輪)
無輪。w/o Borderは、Without Borderの略で、旭日中央部の日章と陽光の間に境界線がないものを指します。no Borderと記載されることもあります。
旧10円金貨明治4年(w/o Flag Borderとの表現もあります)、旧5円金貨明治3年、明治4年、旧1円銀貨明治3年に存在します。
圓 Type1(普通円)
旧1円銀貨明治3年「普通円」。貝字6画目が短いもの。
更に、普通円には「有輪(With Border)」と「無輪(Without Border)」が存在します。容易に識別できるポイントは、菊紋面、リボンの上部にある旭光の先端と玉の位置です。旭光の先端が、玉列の間を指すものが「有輪」、旭光の先端が玉を指すものが「無輪」となります。
圓 Type2(正貝円)
旧1円銀貨明治3年「正貝円」。貝字6画目がバランス良く伸びたもの。
普通円同様、正貝円にも無輪が存在しますが、存在率2%以下とされる珍品で市場で見かけることは滅多にありません。
圓 Type3(欠貝円)
旧1円銀貨明治3年「欠貝円」。貝字4画目が欠けたもの。
古くから有名な手変わりで、稀少性も人気も高い分類となります。
銀 Left(左丸銀)
左丸銀、丸銀左打とも言われます。
丸銀打ちは、明治30年10月から明治31年3月まで、新旧1円銀貨に対し行われました。明治30年、金本位制の公布にあたり1円銀貨の通用禁止を定めたものの、台湾や朝鮮での流通が盛んですぐに流通を止めることが難しく、経過措置として、丸銀を打った円銀のみを国外限定で通用できるとしたためです。
丸銀の存在比率は、全体の1割程度とされ、規定とされる左打ちに対し、右打ちはその半分程度の存在比率ともいわれます。年号による存在比率に大きな差がある点、仕向地により左右を打ち分けた説があるなど、研究の余地が多くある興味深い分野でもあります。
銀 Right(右丸銀)
右丸銀、丸銀右打とも言われます。
申告価格(Declared Value)
グレーディングサービスをご依頼の際、記載を求められる申告価格(Declared Value)は、万一の際の保険上限金額になると同時に、グレーディング料金を決定する基準ともなります。ご依頼者にはもちろんのこと、グレーディング会社にとっても重要な金額となります。
申告価格は、公正な市場価格と定められ、その最終決定は、PCGSやNGCなどのグレーディング機関が行います。PCGS、NGCともに公開しているPrice Guideに記載のある場合は、最新のこの値が適用されます。
記載の申告価格が適正さを欠くと判断された場合、申告価格を変更しての料金請求がなされることや、作業を中止し一旦返却となることがございます。近年、コイン価格の上昇が増えておりますが、あくまでもグレーディング時点での市場価格が適用されますので、ご注意が必要です。
状態評価
収集用貨幣の価値は、希少性と材質、人気に加え、状態により大きく異なります。
状態評価は、日本では通常、完未品、未使用品、極美品、美品、並品の順に並び、アメリカでは、FDC、UNC、AU、EF、VF、F、VGの順で評価されます。
これに加え、状態による価格差が拡大する昨今、公平且つ細かでわかりやすい評価方法が模索され、第三者の専門機関による格付け評価が注目されております。
この評価方法は、70を満点にして1までの記号と数字を用い30段階ほどの分類で行われます。さらに、同じランクでも、見た目が良い品や次のランクに近い美しい品には、数字に"+"記号が付されます。
以下は、日本式の評価基準とアメリカ式の評価基準(弊社商品の評価基準)、さらには数字による評価の対照表です。もちろん、日本式とアメリカ式では評価基準が異なるため、単純に言い換えることはできませんし、主観的な要素を含む上コインにより異なることもあり、一般的且つ絶対的なものでもございません。筆者の経験則に基づく目安としてご参考にされて下さい。
空前絶後品 FDC+ MS68〜70
最高ランク。完全を越える空前絶後ともなると、言葉ではなかなか表現することが難しく、現代物を除き、滅多に与えられることのないランク。バックマークが極端に少ないことはもちろんのこと、時代の経過を感じさせない原色の輝き鋭いものや、歴史を刻み込んだかのような美しい時代色を帯びるものなど、美術品を思わせるたたずまいを持つ。MS68以上ともなると、できたての現行貨幣を除けば、ほぼ幻のランク。
完全未使用品 FDC MS65〜67
未流通未使用貨幣の中でも、製造時や輸送時を含む袋ずれ傷(バッグマーク)が極めて少なく、全面に原色の光沢をたたえる、もしくは原色の輝きと時代色のコントラストが美しい品。なお、洗浄された品は基本的にこのランク以上には評価されない。
未使用品 UNC MS62〜64
流通に乗る前に保管された未使用品。原則、発行当初の原色を持つが、時代相応のトーンや軽度の汚れは認められる。エッジやギザが鋭く整然としている。美観を損ねるトーンや表面の劣化を伴う洗浄品は、その程度により未使用状態であってもマイナス(−)記号や補足説明などがつけられることもある。
準未品 AU MS60〜61
未流通と思われるか、未流通に近い状態。未使用品ながらバッグマークが極めて多い品から、流通の極初期で未使用部分が大半を占めるもの。洗浄などにより原色が失われたり、ヘアラインが見受けられる品を含む。
極美品 EF EF50〜AU58
流通したコインの中では最上の状態。未使用のままと思われる肌を残す一方、デザインの凸部分には少々の摩耗が感じられる。デザインのないフィールド部に細かなスレ傷が確認される。
美品 VF EF40〜45
流通貨幣の中で、比較的美しい状態。全体に流通による摩耗が感じられ、凸部を中心に減る部分もあるものの、主要デザインには欠損するほどの摩耗は見当たらない。トーンや少々の汚れ、洗浄されたものも含む。
並品 F VF30〜35
流通した貨幣の典型的な状態。流通の痕跡と摩耗は全体にわたり、一部デザインの消失を伴う部分も確認される。トーンや汚れ、磨きを伴うものも含まれる。 並品は、上品、佳品、並品などと細分類されることもあり。
劣品 VG F12〜15
日本貨幣では珍しいほど、しっかりと流通した状態。摩耗による目立ったデザインの消失があるものの、年号や額面などは判別可能。著しい汚れや錆、磨きを含む。